条例等探訪ノート =神奈川県中郡二宮町編=

第12回は、神奈川県中郡二宮町です。「二宮町の開発事業における手続及び基準等に関する条例」及び同条例施行規則は平成30年1月1日に、それ以外の条例等は令和元年10月1日に、それぞれ施行と、かなり新しい条例等となっています。

 

 

二宮町の開発事業における手続及び基準等に関する条例
二宮町の開発事業における手続及び基準等に関する条例施行規則
二宮町墓地等の経営の許可等に関する条例
二宮町墓地等の経営の許可等に関する条例施行規則
二宮町墓地等の経営等の許可に係る審査基準 より

 

 二宮町は、神奈川県の町村中唯一、墓地等の経営許可等にかかる条例を制定した町です。町村であれば、県条例を適用するのが原則ですが、自前の条例等を制定した独自性を探訪したいと考えます。

 

1 事前に開発事業の手続きを経ること

 ここでは、「二宮町の開発事業における手続及び基準等に関する条例」を「開発事業条例」といい、その施行規則を「開発事業条例施行規則」といいます。

二宮町ホームページ(http://www.town.ninomiya.kanagawa.jp/)、「二宮町の開発事業における手続及び基準等に関する条例について(平成30年1月1日施行)」にこの条例等の概要が記載されています。

これによると、県の条例である「神奈川県土地利用調整条例」(以前のブログ記事「条例等探訪ノート番外 =神奈川県・開発許可編=」で探訪しました)による大規模開発手続に加え、同町が独自に定める開発事業の定義に入る事業は、「開発事業構想届出書」及び「開発事業事前協議書」提出等、町長との協議、「開発事業構想板の設置」等を行わなければならないものとされています。

開発事業条例施行規則

(開発事業)
第3条 条例第2条第1項第2号の規則で定める行為は、次に掲げるものとする。
(1) 葬祭場(専ら葬儀を行う施設で神社、寺院、教会等を除く。)の設置
(2) 墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)第10条の規定により土地利用(個人又は共同の墓地を公共事業等に伴い移転、新設する場合は除く。)する行為
(3) ペット霊園(犬、猫その他人に飼養されていた動物の死体を火葬するための焼却設備を有する施設又は当該死体を埋葬し、若しくは焼骨を納骨するための設備を有する施設及びこれらの設備を併せ有する施設の設置又は変更(専ら自己の利用に供する目的で設置するものを除く。)
(以下略)

と定め、その規模にかかわらず「葬祭場、墓地等、ペット霊園の設置等」を開発事業に指定しました。このことにより、二宮町では、墓地等の経営許可の申請手続きの前に、独自に開発事業条例等による手続きを経ることとなっています。

 開発事業条例等の手続きの流れなどは割愛しますが、最終的に「開発基準適合承認書」の交付を受けて、墓地等の経営許可手続きに移行します。

 

2 墓地、納骨堂共通の定め

 

【墓地等の経営主体】

1.~3.のいずれか

1.地方公共団体

2.宗教法人

3.公益社団法人及び公益財団法人(墓地等の経営を目的とするもの)

(例外規定) 町民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと町長が認めるとき
(例外規定の審査基準) 個人又は共同の墓地を公共事業等に伴い移転し、又は新設するとき

 

【宗教法人の許可条件】

①~③のすべてに該当するもの

① 町内に主たる事務所を有すること
② 当該事務所を拠点として5年以上宗教活動を行っているもの
③ 当該事務所は、許可等申請の際、現に宗教活動が行われている拠点の建物であること

 

【事前協議時に必要な条件】

宗教法人で公益事業(宗旨宗派を問わない霊園等)を営むときの条件

① 墓地又は納骨堂の設置等に要する費用の50%相当額を超える資金を有していること
② ①で費用を借入れする場合の借入先は銀行法第2条第1項に規定する銀行その他規則で定める金融機関(※1)でなければならない
(例外規定) 町長が特に認めるとき

(※1)
農林中央金庫
信用協同組合
信用金庫
信用金庫連合会
労働金庫
労働金庫連合会
農業協同組合
農業協同組合連合会 (信用事業)の事業を行うもの
漁業協同組合 (信用事業)の事業を行うもの
漁業協同組合連合会 (信用事業)の事業を行うもの
水産加工業協同組合 (信用事業)の事業を行うもの
水産加工業協同組合連合会 (信用事業)の事業を行うもの
その他町長が認める金融機関

 

【墓地等の設置場所の基準】

1.墓地等の敷地は、自己所有地(所有権以外の権利が存しないものに限る。)でなければならない
(例外規定) 次の①~④の事項

① 申請者が墓地等を設置しようとする土地の所有権を有している場合であって、当該土地に抵当権等が設定されている場合(②に規定する場合を除く。)
→ 墓地等の経営の許可の日から1月以内に抵当権等を抹消すること。

② 申請者が墓地等を設置しようとする土地の所有権を有している場合であって、墓地の造成等に要する費用の一部を銀行等から借り入れるために当該土地(墓所、納骨堂及び管理事務所の所在する土地を除く。)に抵当権を設定する場合
→ 設定する抵当権は、当該墓地の造成等に要する費用に係る借入金に対して設定される抵当権に限り、当該土地にその他の抵当権等が設定されていないこと。

③ 申請者が墓地等を設置しようとする土地の所有権を有していない場合
→ 墓地等の経営の許可の日から1月以内に当該土地を申請者に譲渡すること。この場合において、当該土地に抵当権等が設定されていないこと。

④ 申請者が墓地等を設置しようとする土地の所有権を有していない場合であって、当該土地の購入及び墓地の造成等に要する費用の一部を銀行等から借り入れるために当該土地(墓所、納骨堂及び管理事務所の所在する土地を除く。)に抵当権を設定する場合
→ 墓地等の経営の許可の日から1月以内に当該土地を申請者に譲渡し、かつ、当該土地(墓所、納骨堂及び管理事務所の所在する土地を除く。)に抵当権を設定する場合にあっては、当該土地の購入及び墓地の造成等に要する費用に係る借入金に対して設定される抵当権に限り、当該土地にその他の抵当権等が設定されていないこと。

2.墓地等の境界線と人家、学校等との距離が次の(1)、(2)の距離以上であること
(例外規定) 町長が、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認めるとき(※2)

(1) 焼骨を埋蔵する墓地及び納骨堂の境界線から
 ① 人が現に居住し、又は使用している建物の最短距離 75m
 ② 次に掲げる施設等の最短距離 110m

ア 学校教育法第1条の学校
イ 医療法第1条の5第1項及び第2項の病院及び診療所(患者を入院させるための施設を有するものに限る。)
ウ 児童福祉法第7条第1項の児童福祉施設
エ 介護保険法第8条第28項の介護老人保健施設
オ 老人福祉法第5条の3の老人福祉施設

(2) 埋葬(土葬)を行う墓地の境界線から
   人が現に居住し、又は使用している建物の最短距離 110m

(※2)(例外規定の審査基準)
(1) 個人又は共同の墓地を公共事業等に伴い移転又は新設するとき
(2) 既に経営の許可を受けている墓地等の経営の主体のみが変わるとき
(3) 墓地内に納骨堂を設置するとき
(4) 墳墓の区画数を増減するとき
(5) 境内地又は当該隣接地に墓地を拡張又は縮小するとき

3.飲用水を汚染するおそれのない土地であること

 

3 墓地に関する定め

 

【墓地の構造設備基準】

1.ごみ置場、給水設備及び排水設備を設けること

2.管理施設、便所、(※3)の規模以上の駐車場その他墓地を利用する者に便益を供するための施設を墓地の敷地内に設けること
(例外規定) 町長が適当と認めるときは、これらの施設の一部を当該墓地に近接した場所に設けることができる(※4)

(※3) 墳墓の区画数の4%以上の駐車区画数

(※4)(例外規定の審査基準)
当該施設を一体の墓地内にやむを得ず確保できない場合であって、墓地利用者の便益に多大な支障を来さず、かつ管理が十分行き届く範囲に次の施設を確保できるときとする。なお、当該施設についても【墓地等の設置場所の基準】1.に規定する設置場所の基準に適合していること。
① 墓地利用者がおおむね徒歩5分以内で利用できる駐車場
② 当該墓地に近接する当該墓地を経営しようとする宗教法人の境内地内の管理事務所、便所その他墓地を利用する者に便益を供するための施設

3.墓地内の通路は、次の①、②の有効幅員以上であること
  ① 墳墓の区域内通路 1m
  ② ①以外の主要通路 1.2m

4.緑地面積は、当該墓地の面積の30%以上であること

(緑地面積に関する審査基準)
芝墓地等墳墓を設ける区域の芝地及び【墓地の構造設備基準】2.の例外規定に該当する施設の敷地の緑地面積はその算定の対象としない

5.墓地の敷地境界線の内側には、5m以上の緑地帯を設け、かつ、緑地帯の内側に外部から墳墓等が見通せない高さ2m以上の障壁又は密植した生垣(※5)が設けられていること

(除外規定) 境界線の内側に5m以上の緑地帯を設けることで、墓地内の緑地面積が当該墓地の面積の35%を超える場合(緑地帯の幅員は0.8m未満は不可)

(※5)(審査基準) 原則、敷地境界線の高さから内部の敷地が見通せない2m以上のもの

6.墳墓を設ける区域の総面積は、墓地の敷地面積に対して1/3以下であること

7.崖崩れ等による災害を防止するための安全上必要な措置(※6)を講ずること

(※6)(審査基準) 
① 宅地造成等規制法第3条第1項の宅地造成工事規制区域内において行われる宅地造成に関する工事の技術的基準を例とした措置がなされていること
② 建設計画区域内に、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第8条第1項の土砂災害特別警戒区域の土地を含まないよう努めること

 

(墓地の構造設備基準全体にかかる例外規定)
町長が町民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認めるとき

(例外規定の審査基準) 
① 個人又は共同の墓地を公共事業等に伴い移転、新設するとき
② すでに経営の許可を受けている墓地の経営の主体のみが変わるとき
③ 境内地内の、すでに経営の許可を受けている墓地を拡張又は縮小するとき

 

4 納骨堂に関する定め

 

【納骨堂の構造設備基準等】

1.建築基準法第2条第7号に規定する耐火構造であること

2.換気設備を設けること

3.出入口及び納骨装置は、施錠ができる構造であること
(除外規定) 納骨装置の存する場所への立入りが納骨堂の管理者に限られている場合

4.管理施設、便所、納骨数の3%以上の規模を有する駐車場その他納骨堂を利用する者に便益を供するための施設を設けること
(例外規定) 町長が特に認める場合

5.納骨堂の敷地境界線の内側には、隣接する土地から内部の敷地が見通せない高さ2m以上の障壁又は密植した生垣を設けること

 

5 周辺地等への対応の定め

 

この項は、条例等の概略のみ掲載します。詳細を知りたい方は、表題の条例等を参照ください。

 

【経営計画の周知】

・標識の設置
・近隣住民等へ説明会の開催
・町長への報告
報告内容の一般閲覧

【近隣住民等との協議】

・意見の申出
・申出者との協議
・町長への報告
報告内容の一般閲覧

【手続の省略】

町長が町民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認めるとき(審査基準略)

【自主的解決】

・紛争の自主的解決

【勧告】

手続が正当な理由がなくなされていないと認めるとき

【公表】

・勧告に従わないとき
・意見を述べる機会の付与

 


 

前回の平塚市と共通した条文もあり、湘南地域(と私は考えています)の規定の現状を垣間見ました。

墓地等の経営許可を行うにあたり、この町の条例等の最も注目するところは、「葬祭場、墓地等、ペット霊園の設置等」の葬送に関する事業等をその規模にかかわらず大規模開発事業等に指定して、開発事業条例の手続を経由させることにしたところです。これにより、地元住民と共存できる計画の事業のみ受け入れる体制となることを期待したということでしょう。このように地方自治体は、所在する地域に合った独自の条例等を制定することができます。

 

さて次回、前後編に渡って、葬送に関する事業についてある特定の事業に着目し、条例等を制定した市を探訪したいと思います。